春の水(はるのみず、はるのみづ) 三春の季語について
2025/04/01
「春の水(はるのみず/はるのみづ)」
これは、春の季節を詠む俳句などで用いられる三春(初春・仲春・晩春)の季語のひとつです。 まだ寒さの残る早春から、暑さが増す季節の中で見られる、春ならではの水の風景や気配を表す美しい表現です。
この記事では、「春の水」という季語に込められた意味や、なぜ「水」が使われているのかについて詳しく解説します。
「春の水」ってどんな季語?
「春の水」は、春になって雪や氷が解け始め、川や小川に水が流れる様子、あるいはその水の清らかさや柔らかさを表す季節語です。
冬の間は凍っていた水が、気温の上昇とともにゆるやかに流れ始め、生命の息吹を感じさせてくれる。そんな自然の変化を、美しい一語で表現しています。
また、「春の水」は視覚的な美しさだけでなく、聴覚や感覚にも関わる表現も存在します。
・日差しを反射してきらめく水面
・雪解け水が音を立てて流れるせせらぎ
・まだ冷たさの残る澄んだ水の透明感
今自然の光景が、「春の水」という一語に考えられています。
なぜ「水」という言葉が使われているのか?
春を表現するのに「水」という言葉が使われているのは、春の到来を象徴する自然現象のひとつが「水の動き」だからです。
冬の間に静かに蓄えられていた水が、春の陽気とともに動き始める。その様子は、まるで自然が目を覚まし、再び呼吸を始めるような印象を与えます。また、水は古くから生命や再生、浄化の象徴としても用いられてきました。 春という季節が、命の芽吹きや新たな始まりを意味することと、「水」の持つ象徴性が注目され、「春の水」という言葉が季語として考えられました。
俳句の中の「春の水」
俳句では「春の水」の句は、穏やかで明るい情景を描くときに使われることが多い季節語です。
春の水山なき国を流れけり 蕪村「俳諧新選」
石わたる鶴危さや春の水 芥川龍之介
小倉山懐かしくあり水の春 さとうあやか(現代)
俳句における「春の水」は、季節の移ろいを繊細に感じ取る感性を表現するための大切な言葉となります。
おわりに──静かに満ちる春の気配
「春の水」は、目立つ派手さはないものの、春の訪れを静かに、しかし確かに知らせてくれる季節の言葉です。
水が流れ始めるということは、冬が終わり、命が再び動き出す合図でもあります。 自然とともに私たちの心も、少しずつ温まり、これから先に進む気持ちが芽生えてくる…
そんな穏やかな変化を、「春の水」という言葉は静かに告げてくれます。
季節の言葉には、自然の中にある豊かな感情や美しさが込められています。 ぜひ春の日、川のせせらぎや水たまりの反射に「春の水」を感じてください。